今日はハロウィン。日本でもそれなりに有名ではあるけど、実際に仮装したり、「trick or treat」と言ったりする人たちって、あまり見たことがない。・・・見たのは、何かのイベントやテレビぐらいじゃないだろうか。
私のクラスの友達には、手作りのパンプキンケーキやクッキーをくれた女の子もいたけど・・・。その子たちも、当然制服だし、私が例の言葉を言ったわけでもないのに、渡してくれた。
いやぁ・・・、美味しかった。
って、そんなことが言いたいんじゃなかった。・・・たしかに、美味しかったけど。(みんな、ありがとう!)
つまり、今日はハロウィンなんだけど、クリスマスやバレンタインなんかより、メジャーではないよね、ってこと。
そして、そんなクリスマスやバレンタインは、主に恋人同士が盛り上がることが多い。
だから!!今日も、恋人同士でなら、こういうことをしてみてもいいんじゃないか?!・・・というのが、今年の私の意見!
というわけで、部活も終わった現在。私は部室の一室で、早々と日誌を書き終え、ちょっとした準備に取り掛かっていた。・・・って言っても、大掛かりなものはできないから、部室の箒を持ち、家から持って来た魔女の帽子っぽい物を被ってただけなんだけど・・・。この帽子も、近所のスーパーで買った安物だし・・・。
まぁ、ちょっと遊んでみるだけだからね!これぐらいが丁度いいんだよ。
そう自分に言い聞かせて、私はドアから少し離れたところで仁王立ちし、もうすぐ来るであろう人物を待った。
“ガチャ・・・”
よし、来た!!
「。全員、着替え終わ・・・・・・・・・。」
いつも通り、着替え終わった日吉が私を呼びに来てくれた。
日吉は部長だから、誰よりも最後まで残っている。それに、私の彼氏でもあるから、ちゃんと私を迎えに来てくれるのだ。
そんな日吉が私を凝視し、怪訝そうな顔をしながら後ろのドアを閉めた。
「・・・何やってんだ・・・・・・?」
「Trick or treat!」
そう言いながら、私は左手で箒を持ち、右手を思い切り日吉の前に差し出した。・・・もちろん、この右手はお菓子を受け取るためだ。
・・・が、さっきも言ったように、こんなことをする人は数少ない。日吉の怪訝そうな顔も、一向に変わる気配が無い。その上、何も言葉を返してはくれなかった。
「・・・・・・・・・・・・。」
「え〜っと・・・。日吉?」
「・・・・・・・・・・・・。」
“そんなこと”は無いと思いつつも、私は言い直しをした。・・・でも、どこかで“それ”は無いと思っていたからこそ、私はさっきまでの勢いを無くし、差し出していた右手も箒の方へと持って行った。
「え〜っと・・・。『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』・・・・・・って言ったんだけど。」
「意味はわかっている。」
「だよね・・・。」
まさか、“日吉はこの英語の意味を知らないのか?!”とも思ったけど、そんな私の考えは、日吉の即答によって、すぐに消去されてしまった。
次なる考えは・・・・・・こんなくだらない乗りに付き合ってられるか、と日吉が思っているから。・・・うん、こっちの方が可能性高いよね・・・・・・。
この後者の考えを認めざるを得ない気迫で、日吉は私に問い詰めた。
「今日がハロウィンだから?」
「うん・・・。」
「ハロウィンだから?何がしたかったんだよ。」
「こういうのって、やったことが無いなぁ、と・・・。」
「だから?」
「う・・・。ごめんなさい・・・。」
最終的に、そんな日吉の態度に気圧されて、私は大人しく謝ってしまった・・・。
私は、ちょっと楽しみたいなって思っただけなのに・・・。
そうやって、私が少し俯いていると、日吉の足がこちらに近付いてくる音がした。
・・・ヤバイ、怒られる。
なぜか私はそう思ってしまって、ずるずると後ずさった。その間も、日吉が近付いてくる気配がしていた。
マ、マズイ!!と思ったときには、時既に遅し。さっきまで、私が日誌を書いていた机に、私はぶつかってしまった。・・・もうこれ以上、後ろへ下がることはできない。
諦め半分で顔を上げると、やはり日吉が近付いて来ている。しかも、決して機嫌が良いときの表情ではなかった。
やっぱり怒られる!と思って、両手で箒をギュッと握り締め、目を瞑ると、しばらくして前が暗くなった。
恐る恐る目を開けると・・・。
目の前に日吉のネクタイが。少し見上げれば、日吉の顔が。
視線を落とすと、どうやら日吉の両手が、私の後ろの机に置かれているようだった。
お、追い詰められた・・・!!
「ご、ごめんなさい・・・。その・・・。ちょっと、ハロウィンを楽しもうかなって・・・。」
近くの日吉と目も合わせられないまま、私はまた大人しく謝った。でも、それに対する日吉の返事は、意外なものだった。
「じゃあ・・・trickで。」
「え・・・?」
「悪いが、俺は菓子の類は持っていないからな。」
「・・・そっか。そうだね。」
うん、そりゃそうだ。ジロー先輩なら、ポッキーとか持ち歩いてそうだけど。
・・・って、違う!そこじゃない!
私は驚きながら、今度は日吉の顔を見つめた。
「で?」
「『で』?」
そんな私に対して、日吉が何かを促すように言った。私は訳がわからなくて、日吉の言った言葉を、そのまま繰り返した。
そうやって、私が不思議そうにしていると、日吉が体を少し近付けて来た。
・・・いやいや!今でも充分、恥ずかしいんですけど?!また近付いちゃうの?!!
と思ったけど、それ以上に恥ずかしいことが起こった。
なぜなら・・・。日吉が近付いてきたのは・・・。体と言うよりも、顔の方で・・・。さらに、その顔は私の顔の横の方へ寄り・・・。
つまり、日吉の口は、私の耳元にあるわけだ。
「イタズラ、してくれるんだろう・・・?」
「!!!」
しかも、いつもより少し低音の、息を抜いたような口調で、こんなことを言われて、恥ずかしくないわけがない!!
唯一の救いは、それを早く言い終えると、日吉はすぐに元の位置に戻ってくれたことだ。
・・・いや、救いなんかじゃない。
今、私が恥ずかしくて赤面している様が、はっきりと日吉に見られることになるじゃない!!
案の定、日吉は私の顔を見ると、ニヤリと笑った。・・・性格、悪いよ!
「一体、どんなイタズラをするつもりなんだろうな?」
「どんな、って・・・。」
「まぁ、この体勢なら、できることは限られるが?」
日吉は楽しそうに言ってのけた。
な、何をさせるつもりなんだ、この男は!!
日吉は何も具体的には言っていないけど、なんとなく、私には想像がついてしまった。
・・・まさか、キス・・・とか・・・。と考える自分が余計に恥ずかしくなる。
そもそも、どんなイタズラをするのか、なんてことは考えてなかった・・・。だって、ちょっと言ってみたかっただけってのが大きいし・・・。日吉がこんな風に乗ってくれるとは思ってなかった。
むしろ、日吉が乗りすぎ。こんなの日吉じゃない。
「日吉・・・。いつもと違う。」
「何が?」
「いつも、こんなことしないじゃない・・・。」
「そうか?・・・だったら、の魔法にでもかかったんじゃないのか?」
また日吉はニヤリとそう言う。
だから、そういうの、だよ!!日吉、そんなことを言うような人じゃないでしょ?!!
私が焦りに焦っていると、日吉が突然、私から離れた。
一安心するのも束の間。今度は、日吉が自分のお腹を押さえて、ククク・・・と笑い始めた。
い、一体何なの?!!
「悪い。・・・少し、からかっただけだ。それにしても、お前・・・。」
あくまで楽しそうな日吉。
・・・・・・って、えぇー?!!からかった、だけ??!!!
緊張から解放されたような、でも、次はかなり驚いてしまって、何だか訳がわからなくなった。そして、何を言えばいいのかわらなくなって、口をパクパクしていたら・・・。
「本当、お前の反応は面白すぎ・・・。」
などと言って、まだ楽しそうに笑っている。
全く、本当にどういう神経してるのかな?!!
ようやく、落ち着いてきた私は、手に持っていた箒の柄の部分で日吉をコツンと突いてやった。
「・・・何だ?」
「仕返し。と、trick、だよ。」
私はキッと強く睨みながら言ったのに、日吉はまた馬鹿にするように笑った。そして、次に言ったことは・・・・・・・・・。
「くだらないtrickだったな。・・・何なら、俺が手本を見せてやろうか?」
「結構です!!」
ニヤリと笑いながら言う日吉に、私は思い切り否定した。それを見て、日吉はさらに楽しそうに笑っている。
・・・まぁ、日吉が楽しんでくれたのなら、今日こんなことをしてみたのも悪くはなかったのかもしれない。私もドキドキはしたけど・・・楽しかったのは楽しかったし。来年もまた、何かできるといいね!
・・・・・・いや、やっぱり来年は止めとこうかな・・・。
実はこれ、今年の7月に完成したもの(笑)。昨年、「来年ハロウィンネタをできたらいいなぁー」みたいなことを言っていたので、ネタが思い付き次第書こうと思っていたら、こんなに早く・・・(汗)。まぁ、遅いよりかはいいですよね!
そんなわけで、陰では日吉夢を書いていたのですが、更新履歴を見ると・・・全く日吉くんの名前が出てこないので、内心ヒヤヒヤしてました・・・(笑)。皆様も「えっ?ここ、日吉メインじゃなかったっけ??」と不安に思われたかもしれません。
大丈夫です!ここは日吉メインです!!現在、水面下ではとある企画が進行中。詳細は本日のblogにて発表いたします。もしよければ、そちらもチェックしてやってくださいませ。
('09/10/31)